2008.12.08

生まれた時に植えた桐で桐箪笥ができるのか

 日本の昔から伝わる慣わしとして、「女の子が生まれた時にの苗を植えて、その子がお嫁に行く時に成長した桐の木を使って嫁入り道具の一つとして桐箪笥を作って持たせた」という言い伝えがあります。果たして、この言い伝えは、実際に桐箪笥を製作して行われてきたことでしょうか。

 そもそも桐の木は確かに成長がとても早い木ではあります、いくら成長が早いといっても、10年や20年といった期間では、求められている桐箪笥たんすの製作に使えるような材木の大きさまでには成長することはありません。それに、桐箪笥を製作するためには、どんな桐の木であったとしても決して生木を使うことはなく、2、3年ほど乾燥させでアクを抜いた材木を使用します。桐の木も同様に、自然乾燥させて初めて桐箪笥の製作に使えるような材木になるので、この桐の木の乾燥期間も加える必要があります。

 桐箪笥の製作に一般的に使われているものはだいたい樹齢30年ほどの桐の木ですが、桐の木の乾燥にその後2年かかるとなると32年になりますので、もはや女の子の嫁入りには間に合わない年数になってしまいます。現代と違って昔の女性の結婚は10代でというケースも多かったので間に合うはずもないといえます。

 また、桐箪笥を作る木材の量としては、一本の桐の木ではまったく足りません。もっとも、どんな形状や大きさの桐箪笥を作るかによっても桐の木材の必要量は変わってくるとはいうものの、それでも数本の桐の木がないと一棹の桐箪笥ができあがることはありません。こうしたことから、女の子が生まれた時に植えた桐の木で嫁入り道具としての桐箪笥を作ったという話は、現実には不可能なことです。実際にその桐の木で桐箪笥を作ったというよりも、むしろ「桐の木の生長は、それほど早い」という物の例えで言われ続けられてきたものではないかと考えられます。
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